<プロローグ>
シアトルを飛び立って3時間。
眼下にずっと広がっていた雲の海がようやく途切れると,そこには雪を冠した山々が連なってそびえていた。
僕を乗せたアラスカ航空のB737は,その山々に近づくように高度を下げていく。
手が届きそうなくらい近くに山肌が迫ってくる。

どこまでも続きそうな絶景の向こうに,やがて大きな湾が見えてきた。
そのほとりには交差した滑走路があるのが見て取れる。

そこが,僕の目的地。

「うわぁ,あの山がぜんぶ背景になるんだ・・・!」


素晴らしすぎる立地を僕に見せつけるかのように海の上でぐるりと大きな半円を描いて,
飛行機は滑走路への最終進入コースに乗った。
半分凍った海が太陽の光を受けてキラキラと輝く。
太陽の高さは見た目で言うと日没30分前くらいで,空もほんのりオレンジがかっている。
でも実際の時刻はお昼の12時。これでも一日で一番高い太陽ということになる。

真下の景色が半分凍った海から半分凍った大地に変わる。
キンキンに冷えてそうな滑走路にタイヤが触れ,逆噴射で軽くダイヤモンドダストが舞う。

とうとう来たんだ。

いつか来たいと初めて思ってから何年たったんだろう。
とうとう僕は、北緯61度の聖地、アンカレッジに降り立った。

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