ロケットの打ち上げを自分のお目めで見に行こうツアー
H-IIAロケット7号機編
<Part-4>
   
一緒に打ち上げを見た「同志」たちとしばし感慨にふけり、見物場所をあとにしました。
そのあとは南種子町の居酒屋で後輩と「打ち上げの打ち上げ」。
ホッとしたのと、疲れと、今見たものに対する呆然さとで、思いのほか静かな宴でした。

フワフワした気分のまま宿にチェックイン。
宇宙センターに近い南種子の宿は埋まっていると思っていたのですが、
種子島に着いてから観光案内所で貰ったパンフを見て掛けた1件目で「空室あり」の返事。
行って聞いたところではたまたま僕が電話する直前に空いたそうで・・・。
今回も滑りこみセーフを連発してます。自分の遠征運はやっぱりすごいかも。
打ち上げ関係者の方も多く泊まっている、快適な温泉宿でした。
壁に貼ってあった打ち上げ告知のポスターを頂けないかお願いしたら、
わざわざ新品を出してくださいましたm(_ _)m。
  
↓以下の画像はクリックで拡大できます
翌朝。
別の宿に泊まっている後輩はのんびり寝たそうだったのと、種子島に来たら歩かないとなんだか気が済まない・・・というわけで宿から宇宙センターの展示館まで10キロほど歩きました。

島のあちこちにあった「打ち上げ成功を祈ります」といった横断幕が、素早く「打ち上げ成功おめでとう」に変わっています。嬉しい光景です。
   
このキャラ大好き( ̄∇ ̄♪

商店街の幟にもなってたので持って帰りたくなりました。
商品化してくれないかなぁ。
   
展示館に来たのは、もう昨日の打ち上げ映像をビデオ上映しているかなと期待したからだったのですが、それはまだでした。

その代わり「宇宙センター見学バスツアー」なるものを発見。1時間ほどのコースで定員50名。迷わず申し込みました。

写真はバス車内の様子。職員のお姉さんが「このように広々とした種子島宇宙センターですが、アメリカのケネディ宇宙センターは種子島と同じ位の広さがある」とか面白い話を聞かせてくれるのはいいんですが、昨日打ち上げがあったことにまるで触れず、そんなこと知らないかのようなマニュアル通り(?)の喋りっぷりはちょっと寂しい・・・。「本日は射場では作業を行っておりますのでそちらの見学はできません」なんて、「昨日打ち上げがあったばかりなので」って言ってくれればいいのにさ。
   
最初は「ロケットの丘展望台」。
4号機のときに組立棟からの機体移動を見た場所です。昨日の今日なので当然射場は入れないためここで射場の説明を受けました。・・・タイミングが合えば射場にも入れるということなのですね。それを狙ってまた来たいな。
   
理由はわかりませんが、ちょうど火災防止のスプリンクラーが作動してました。

昨晩3000度の炎を浴びだ発射台ですが、望遠レンズで見ても特にダメージは見当たりませんでした。
   
続いては「大崎第2事務所」なる建物。
バスツアーの案内を見て、飛びついた最大の理由がここでした。

そこにあるものは、先代H-IIロケット8号機の失敗を受けて打ち上げが中止され、5年以上眠っているH-IIロケット7号機なのです。
(H-IIは製造号機と打ち上げ順に一部逆転があって、1→2→3→4→6→5→8→7の順でした)

かつて中型ロケットの組立施設だったという薄暗い建物に足を踏み入れます。
ガラス越しにでも見るのだろうと思っていたのですが、
「手を触れられるくらいのところに置いてありますが、触らないでください」
との注意。そんなに近くで見られるのと思いながらドアをくぐると・・・。
息をのみました。
手を触れられるどころか頭をぶつけそうなところに、ロケットが横たわっていました。
手前が第1段。その向こうが第2段。
一番奥は、全機形態のロケットを発射台に据えてメインエンジンを燃焼させる試験を行った、ダミー機体(といっても事実上本物ですが)です。
こちらがそれぞれロケットの下側の面。中央に付くはずのエンジンはありません。
110トンの推力を受けるメインフレームはそれなりにゴツく見えますが、そこから先は本当に華奢そうな構造です。

こんな至近距離で見るのは初めてのロケットに「へぇーこうなっているんだ」とワクワクする気持ち。でももう飛ぶことはできないことに胸が詰まる気持ち。嬉しいのか悲しいのかわからない涙が出てきそうでした。

少し前に新聞で見たところによると、これらの機体にはすでに資産登録上1円の価値しかなく、あまりの大きさに引き取り手もなく、このままH-IIAパワーアップ型の開発などで場所が必要になってくると廃棄せざるをえないとのこと。日本の工業史を語る上で欠かせないこの機体を単にその場の都合で廃棄してしまうなど絶対にあってはならないことだと、一エンジニアとして思います。
   
大崎第2事務所を後にして、最後は総合指令棟。
打ち上げ時に、JAXA理事長をはじめとする責任者クラスの方々が陣取る司令室を見学しました。

より現場に近い人達がいる広い部屋はロケットに近いところにあるはずで、こちらは机も2列しかなく思ったより小さい印象です。
   
偉い人の机なのにマウスパッドが「バザールでござーる」。
   
何度来ても本当に美しいところです。
でも3度来て3度とも冬なんですよねぇ・・・。
今度こそ夏に来たいなと思います。
   
先代H-IIロケット実物大模型(ちなみにちゃんと三菱重工製)。
以前はH-IIのほうが格好いいと思っていましたが、慣れもあるのか最近はH-IIAのほうがバランス良く感じます。
   
資料館の背後の丘の斜面には、シャトルを模した植え込みが。
のんびりピクニック気分を味わいたいのはヤマヤマですが帰りの船の時間があるので、もう行かなくてはいけません。

「やっぱ2年に1回くらいは来ないときが済まないなー」

タイミングが合えば2年といわずまた来るのでしょう。
心のリフレッシュと技術者としてのやる気アップが両方できる、この島に。
   
おしまい