ロケットの打ち上げを自分のお目めで見に行こうツアー
H-IIAロケット試験機2号機編
<Part-2>
翌日午前11時28分の打ち上げを目指して、前夜の宇宙センターは夜を徹しての準備作業に追われます。そのハイライトはロケットを組立棟から500メートル離れた射点まで運ぶ機体移動作業。もちろん見逃すわけにはいきません。
移動は午後11時ごろと聞いたのですが、どこかで時間をつぶそうにも当てはないし夜中に宇宙センターに戻ってくるのも大変なので、「ここで見よう」と決めた場所で夕方からじっと待つことにしました。これが寒いのなんの・・・。寝ようにも寝られないし話し相手もいないし暗くて本も読めないし、ただひたすら時間が経つのを待ちました。見上げた星空は感動的に綺麗でしたけどね。
待ちモードに入って4時間ほどたった午後9時半。組立棟の扉がゆっくりと開きました。まだここからはロケットの姿は見えませんが一気に気分が高まります。センター内に響く「機体移動は23時00分から開始」というアナウンスも聞こえてきました。
午後11時になりました。
「機体移動 開始」
のアナウンスが聞こえてきます。
カメラを望遠鏡代わりにじっと覗き、ロケットが見えるのを待ちます。
「来い 来い 来い・・・来たぁっ!」
白・オレンジ・黒3色のロケットの姿がついに見えました。そおっと、そおっと大切に組立棟から引き出されてきます。
「くあぁ〜 かっこいぃ〜♪」
視線は完全にロケットに釘付けです。
組立棟から射点までの道のりは500メートル。時速2キロというゆっくりとした、でも着実なペースでしずしずと動いていきます。
ちなみに先代のH-IIでは衛星を搭載したロケット先端部は射点で取り付けていたので、移動は打ち上げの1か月くらい前に行われてしまいますし、なによりもロケットの先っちょが無い間の抜けた姿でした。でもH-IIAでは打ち上げの半日前なので打ち上げとセットで見られますし、完全な姿での移動なので、ビジュアル的にもかなり良いです。サンダー○ード1号の発進シーンみたいで男のロマンをくすぐります。
20分ほどかけて射点に到着しました。
サーチライトに照らされて闇に浮かぶ、今まで見たことのない不思議な物体です。
このあと午前2時から打ち上げまで、ロケットを中心に半径3キロの範囲と宇宙センターの敷地内が立入禁止になります。今いる場所はセンターの中なので、このまま打ち上げまでいることはできません。というわけで、昼間に見つけておいた打ち上げ見物場所まで歩いて移動です。距離は約10キロ。今夜は宿なしで一晩中ロケットを眺めて過ごすつもりなので、のんびり行きましょう。
ちょくちょく休憩しながら3時間ほどで目指す場所までやってきました。街灯もほとんどない道のりでしたが月夜だったので意外と明るく、持っていた懐中電灯もあまり出番はありませんでした。
種子島は高い山はないのですが丘がいくつも続いているような地形で起伏がやたらと多いので、高台からロケットが見える場所がいくつかあります。この場所もそのひとつで、機体移動を見たさっきの場所はロケットを「横」から見る感じですが、ここはほぼ真正面になります。ロケットまでの距離は約5キロ。ちょっと遠いですが、打ち上げ時刻の太陽の方向なども考えると今回はここがベストだと判断しました。
この場所からだとちょうど太陽がロケットの真後ろから昇ってくるはずだったのですが、残念ながら朝だけはちょっと雲が広がってしまいました。
そんな雲も打ち上げが近付くと消えて青空になりました。空気も昨日よりはちょっと霞んでいますが5キロ先のロケットはきちんと見えます。打ち上げの1時間くらいまえから僕のいる場所にも人が増えはじめて、最終的には30人くらいになりました。ここはNASDAが「ロケットの見学場所」として案内している公園などではなくただの道端なので、いかにも「ロケットを見るために種子島へきました」という感じの人は僕を含めて2人だけであとは地元の方ばかりでした。
打ち上げ10分前。発射台のまわりに火災防止のための放水が行われました。いよいよです。めっちゃドキドキします。
・・・と、
「11時45分に延期だって。船が入ってきたんだと」
ドキドキも仕切り直しです。
改めて打ち上げの時間が近付くと、近くに関係者の方の車が止まって無線交信といっしょにカウントダウンが聞こえるようになりました。
・・・2分前。
打ち上げを知らせる花火が上がりました。今度こそ間違いなく打ち上げです。
・・・1分前。
カメラのピントとモードをもう一度確認。OKです。
・・・30秒前。
「ええっもう!?」という感じ。
「ちょっと待ってまだ心の準備が・・・」と思っても待ってはくれません。
心臓がバクバクします。まわりもシーンと静まりかえっています。
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1・・・
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