この回は、てらだのりこ師匠の「ひこうきからのおくりもの」とのコラボ(?)になっています。
同じ日、同じテンに大阪と北海道でそれぞれ幸せをもらったお話。
まずはてらださんの関西編からどうぞ。関西編の最後からこちらに続きます。


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メールが届きました。
関空から、こちらへ向かって予定通りに飛び立ったという知らせ。
日没に間に合うかが一番心配だったのだけど、これならきっと大丈夫。


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この日、僕は臨時便のDC-10も会いに関空へ行くため、朝の3時に起きました。
・・・ところが、昼過ぎには旭川にいたのです。

運命が変わったのは、出かける準備をしながらネットで発着案内をチェックして、
臨時便のテンがホノルルから着いたあとの出発時刻と行き先を調べたときでした。

 経路:
  KIX 15:05 → AKJ 17:00
  AKJ 18:30→ HNL 7:00

 機種:
  D10

「AKJってどこや?」
どうやらどこかの空港からホノルルチャーターに飛ぶようですが、
空港コードに疎いので「AKJ」がどこかわかりませんでした。
「A・・・K・・・『あきた』かな?」
などと思いながら、「AKJ 空港」というキーワードでGoogle検索をかけたところ・・・

「ええっ!? 『あさひかわ』っっっ!?!?!?」

そのあと1時間、話すと長い葛藤がいろいろあった後、
午前4時の僕は旭川に行くことに決めていました。

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メールをもらってから1時間半。
旭川空港に飛行機は1機も来ませんでした。
昼過ぎに旭川に着いてから、場所を決めるまでに来た飛行機はたった2機。
急に思い立っての旅なので下調べもあまりできないままで、
自分が立つ場所がここでいいのか自信がもてません。

「そろそろかな、そろそろかな・・・」

そわそわしながら何度も時計に目をやりました。
来るのは、4時45分から5時の間だろうと踏んでいました。
   
4時半過ぎ。南の空に、東京便のA300の機影が見えました。
「よっしゃ。A300が先に来た。」
どちらが先に来るか微妙だなと思っていたのですが、
これでテンの前にリハーサルをさせてもらえます。

静かな空港だからか、まだ遠くにいるのにエンジンの音が響いてきます。
静かな空港だから・・・
「ん? それにしても音が近くない?」
はっとして顔を上げました。
真上にDC-10がいました。

「やっほ〜 ここだよ〜」
と、気持ちよさそうな声が聞こえてきた気がしました。
 
お客さんが乗っているA300を先に行かせたんだね。
そして、自分は北海道の風景を眺めるように悠々と旋回していました。
  

◆ ◆ ◆


A300のランディングを追うとき、
リハーサルのつもりなのに、フィルムもなるべく残さないといけないのに、
あまりに綺麗なので思わずシャッターを切る数が増えてしまいました。
あと22枚・・・まぁ足りるかな。
.
さあ、DC-10の番。
気合を入れて脚立の上に立ったのだけど、ものすごくドキドキしています。
体が震えてとまらない。カメラを構える腕が安定しない。
こんなんじゃ撮れないよ・・・早く安定させないと・・・。
焦っている間にテンは近づいてきます。

ファインダーに捉えたテンの姿は、しばらくの間なかなか大きくなりませんでした。
「まだ早い・・・今切ったら後で足りなくなる・・・」。
震える手がシャッターを押そうとするのをこらえるのがもどかしい時間。

第2エンジンが見えたところでシャッターを押しはじめました。
はじめのうちは構図を考える余裕も少しはあったのですが、
テンと一緒に撮りたかった緩やかな丘の上の林が目に入ると、
もう夢中で何も考えられなくなっていました。
本当はもっとズームを引いて撮るつもりだったのに、腕が硬直しています。
体の震えをこらえながらテンを見つめ、シャッターをひたすら押すことしかできませんでした。

滑走路の上に差し掛かったくらいで、フィルムが切れました。
とっさにカメラを顔から離しました。
目の前をテンが駆け抜けていき、そしてタッチダウン。
とてもとても綺麗に夕日に染まりながら、とてもとても綺麗な風景の中を。

テンの着陸を、ファインダーを通さずに見たのはいつ以来だったでしょう。
狭いファインダー越しの風景では、こんなに綺麗には見えなかったことでしょう。
フィルムが切れたおかげで自分の目に焼つけられたことが、かえって嬉しく思えました。


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↑コンパクトデジカメムービーもあります↑
震えまくり、シャッターを切りまくり、フィルムが切れるまでの一部始終がよくわかります(^-^ゞ。


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