フェリーと客船撮りまくりの北欧の旅のハイライトに、憧れのシリアラインでバルト海の船旅を楽しみました。 ヨーロッパでは、いわゆる「クルーズフェリー」というジャンルが確立されていて、日本のフェリーより数段大きくて豪華なフェリーが北海やバルト海を行き来しています。シリアラインはこの代表格といえる船会社で、スウェーデンとフィンランドを結ぶ2つの航路で世界最大級のフェリーを運行しています。 スウェーデンとフィンランドを結ぶ航路は、両国の首都を結ぶメイン航路であるストックホルム〜ヘルシンキ航路と、フィンランド第2の都市トゥルクとを結ぶサブルートのストックホルム〜トゥルク航路があります。ヘルシンキ航路は所要16時間前後で夜行便のみ、トゥルク航路は所要11時間で昼行便と夜行便が運行されています。2001年夏期の運行スケジュールと就航船はこうなってました↓。 |
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今回はストックホルムを午前8時に出てトゥルクへ午後8時に着く便に乗船し、トゥルク到着後はすぐに列車に乗り換えてヘルシンキへ向かいました。日程的には夜行便を使ったほうが時間的にも宿泊費的にも効率的なのに、あえてこの便を選んだのには、「一日じゅうゆっくり景色を眺めながらクルーズを楽しみたかった」などいろいろ理由はありますが、正直言って一番の理由は「シリア・オイローパが一番格好いいから」です(笑)。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
↓一部の写真はクリックで拡大できます | ||
ストックホルムのシリアライン・ターミナルは町の外れにあります。ストックホルム中央駅からシャトルバスも出ていますが、宿(有名な帆船のユースホステルです)から中央駅はちょっと離れていたので、今回は宿の近くから出ている路線バスを利用しました。 バスがターミナルに着くと、ちょうどこれから乗るシリア・オイローパがトゥルクからの航海を終えて接岸するところでした。 |
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シリアラインはユーレイルパス(ヨーロッパの鉄道乗り放題パス)ユーザーの強い味方です。基本乗船料が無料になるので、昼行便なら個室をとらなければ無料で乗船できてしまいます。夜行便の場合は寝床を確保しなければいけないので、船室の使用料がかかりますが、それでも一番安い部屋で4000円くらい(?)で乗れるようです。 僕もこのユーレイルパスを持っていましたので今回はタダ乗りですが、窓口での乗船手続きの際に25クローネ(約300円)請求されました。港湾税でしょうか?まあそれでもタダ同然ですね。 乗船手続き後、一旦ターミナルの外へ出て船の写真を撮りました。全長200メートルのフェリーは日本にもありますが、12階建てという高さのため圧倒的にボリューム感があります。 ここで、シリア・オイローパの紹介をしておきましょう。シリア・オイローパ(欧文表記はSijla Europaです。英語綴りのEuropeじゃなくてドイツ語綴りのEuropaなので、ドイツ語読みでオイローパと呼ぶのがたぶん正しいのでしょう)は1993年建造のカーフェリーで総トン数は59900トン。2001年春にこれよりも0.1%だけ大きいフェリーがイギリスとオランダを結ぶ航路に登場するまでは世界最大のカーフェリーでした。元々はシリアラインのライバルであるバイキングライン向けに建造が進められていたのが、完成直前にバイキングラインの当時の親会社が倒産してしまいシリアラインに流れてきたという、ちょっとワケアリの船です。ちなみにバイキングラインが計画していた船名は「オイローパ」。これに「シリア」をくっつけただけの名前で使ってしまうシリアラインもなかなかいい度胸ですねぇ・・・。嫌味ですか?(笑) |
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乗船は出発20分前の7時40分からです(ちなみに、ストックホルム〜ヘルシンキ航路は1時間半前から乗船できます)。乗船口のところにコインロッカーがあったので余計な荷物を放りこんで身軽になり、出港時はやっぱりデッキでしょう!というわけで最上階のデッキへ上がりました。 シリア・オイローパを選んだ大きな理由の一つが、デッキがブリッジ(操舵室)より上にあるということでした。写真でお分かりいただけると思いますが、広々としたデッキが船の先頭まで続いていて、12階という高さも手伝って前方の眺めがとにかく素晴らしいのです。シリアラインの他の船も前向きのデッキはありますが、いずれの船もブリッジの下に細い通路状になっているだけので開放感はシリア・オイローパの圧勝です。 ストックホルム〜トゥルクの航路は全行程の半分以上を、無数の島々の間を縫うように航行していきます。海より島が占める面積のほうが広いくらいなので、むしろ延々と入り江を航行している感じです。船は狭い水路を、方向転換をくりかえしながらゆっくりと航海していきますのでデッキにいても風もたいてい強くありませんし、常に変化していく景色はいつまでも見飽きることがありません。 ときおり、進行方向がちょうど向かい風の方向になるとスゴイ強風になりましたが、そんなときのために一回り内側は風よけのガラスに囲まれたデッキになっています。天気も良かったので気持ちいいったらありません。ここでボーっとしているだけあっというまに2時間経ってしまいました。こんなデッキがあるのだから、わざわざ個室をとって部屋にこもる必要なんてないですよね。 バルト海は波が穏やかですし船もバカでかいので、揺れはじっと立ち止まって神経を集中させてはじめて「あ、揺れてる」と感じる程度でした。まったく揺れないと言っていいでしょう。ただ、ときおり波の揺れともエンジンの振動とも違うガタガタッという感じの小刻みな揺れがありました。巨大な船体が風に巻かれていたのでしょうか? |
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デッキは前から後ろまでずっと続いています。先頭部では12階の高さで、中央〜後部では1フロア上がって13階になります。 ちなみに、写真に見えている煙突のデザインはバイキングラインのもの。この船の経歴がうかがえます。 |
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デッキの最後部です。13階から10階まで4層構造になっています。ヘリポートまでありますが、ふだんはお昼寝用寝台になっています(笑) 白い泡がほとんど立っていない航跡からも、わりとゆっくり航行していることがわかりますね。 |
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出航して40分ほどすると、前日の夕方にヘルシンキを出てストックホルムへ向かうシリア・シンフォニーとすれ違いました。航路が狭いおかげで、すれ違いもけっこう近いです。 |
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2時間ほどデッキで過ごし、今度は船内をまわってみました。シリア・オイローパのレストランやショップなどは7階と8階に集められていて、他のフロアは前から後ろまでズラッとキャビンが並んでいます。千単位の数のキャビンを、港でのわずか1時間の折り返し時間に清掃・ベッドメイクするなんてとても無理なので航行中にも清掃が行われています。ちょうど清掃中のフロアでドアが開けっ放しのキャビンを見つけたのでちょっと覗いてみました。 この部屋は窓付きの「けっこういい部屋」です。安い部屋は窓はありませんし、2段ベッドです。一番安い部屋になると車両甲板より下の階で、水面よりも低いらしいです。 |
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7階には免税店が並んでいます。ストックホルム〜ヘルシンキ航路のシリア・シンフォニーとシリア・セレナーデには5層吹き抜け、全長140メートルのショッピングアーケードが船の中にあるそうなのですが、シリア・オイローパの免税店街は4、5件の店舗があるだけです。ここは船の最後尾にあるスーパーマーケット風の免税店。店の半分はアルコール売場で占められていて、乗客が次々に缶ビールを箱買いしていました。税金の高い北欧では、乗客は免税ショッピングが欠かせないようです。 アルコールに興味のない僕は、実家や大学の研究室へのお土産にするチョコレートなどを物色しました。 |
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ここは、ホテルでいうとエントランスホールにあたるところです。7階と8階が吹き抜けでつながった広い空間になっています。階段を下りたところにレセプションがあります。 | |
エントランスホールから12階までも小さめの吹き抜けでつながっていて、このようにガラス張りのエレベータが備えられています。 |
しばらく船内で過ごしていましたが、「やっぱりデッキのほうがいいや」というわけで再びデッキへ。 出航から4時間ほどすると周りを取り囲んでいた島がだんだん小さくまばらになっていき、最後は小さな岩になって消え、シリア・オイローパはやっと大海原に出ました。 |
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ストックホルムへ向かうフェリー2隻と連続してすれ違いました。向こうには、ストックホルムをこの船より30分早く出発して同じくトゥルクへ向かっているバイキングラインの船も見えます。 |
朝から何も食べていなかったのですっかりお腹がすきました。ランチの時間です。 シリア・オイローパのメインレストラン「ビュッフェ・オイローパ」は、スモーガスボード(いわゆるバイキング)の店。1回1時間半のテーブル予約制で、時間は13時と15時からの2回です(さっきの船内散策のとき予約をしておきました)。ブリッジの下に並んだやたら眺めの良さそうな窓のところにレストランはあります。バッチリ窓側のテーブルが予約できたので、大きな窓から絶景を眺めながらのランチを楽しめました。料金は125フィンランドマルカ(約2500円)。ソフトドリンクに加えビールとワインも料金に込みです。 メニューは肉類からシーフード、野菜まで豊富です。味もいいと思います(僕の舌はあまり当てにならないのですが・・・)。「よーし食うぞー!」と気合いを入れて臨んだのですが、これまでの3週間以上の旅の間、不思議なくらい食欲がなくて1日1食か2食しか食べていなかったせいで胃が小さくなっていたらしく、すぐにお腹が苦しくなってしまいました。 |
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食事の時間が終わるころ、途中寄港地のマリエハムンに到着です。先行していたトゥルク行きのバイキングラインの「イザベラ」と、逆にトゥルク発ストックホルム行きの「アモレラ」が出航していくのと入れ替わりに入港しました。 マリエハムンはバルト海に浮かぶフィンランド領オーランド諸島の中心都市です。寄港はもちろんこの島への足としての目的もありますが、EUの統合で単にフィンランドとスウェーデンを結ぶだけでは船内で免税品の販売ができないため経済独立区(?)であるここに寄港することで免税品の販売を可能にしているという意味があるそうです。 |
バイキングラインの船とすれ違い、ターミナルの真横まで来るとその場で180度ターンして接岸します。食べ過ぎて重たいお腹をさすりながらデッキに上がると、トゥルク発ストックホルム行きのシリア・フェスティバルが入港してくるところでした。バイキングライン、シリアライン共に、このマリエハムンで相方とすれ違うわけです。 6万トンのシリア・オイローパに対しシリア・フェスティバルはふたまわり小さい3万4千トンなので、屋上のデッキから見ると完全にこちらが見下ろす感じになります。船齢もフェスティバルのほうが古く、小さいぶん設備も劣るそうなので、せっかくシリアラインに乗るのならばフェスティバルは避けたほうがいいと思います。余談ですが、「地球の歩き方」にはシリアラインの紹介で「ストックホルム〜ヘルシンキにくらべて、ストックホルム〜トゥルクの船は数段劣る」と書かれていました。たぶん記事を書いた方はシリア・フェスティバルの便に乗っちゃったんでしょうね。 |
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マリエハムンでの停泊時間はわずか10分ほど。前に停まっているシリア・フェスティバルが先に出発し、そのすぐ後を追うようにこちらも出航です。しばらく前後に並んで航行し、やがてフェスティバルは右に曲がってストックホルムを、オイローパは左に曲がってトゥルクを目指します。 | |
デッキは風が強くなったので船内に退散。 船内にこんな場所を見つけました。眺めはいいし横になれるソファーもあります。しかも、ちょっとわかりにくいところにあるので人が全然いません。朝も早かったですしお腹もいっぱいなので、しばしお昼寝・・・Zzz。 |
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船旅の最後の2時間もやっぱりブリッジ真上のデッキで過ごしました。ポカポカ陽気のいい天気にも恵まれて、このデッキはホントにもう最高でした。雨が降ったり寒かったらこうはいかなかったのでしょうけどね・・・。この旅行では天気にはかなり恵まれていたと思います。 | |
トゥルクが近付くと、ふたたび船の周りは無数の島々に埋め尽くされました。ブイで示された、船の幅よりちょっと広いだけの細い水路をソロソロと進んでいきます。海辺で散歩や夕涼みをしている人が、顔が見えるほど近くに見えます。どちらからともなく自然に手を振り合える、そんな距離です。 | |
午後8時すぎ。定刻どおりにトゥルクに到着しました。夏至の頃は真夜中でも空が真っ暗にならないそうですが、8月下旬では日が沈むのが9時くらい、西の空に残っていた赤さまで消えるのが10時くらいでした。 | |
車が乗降する出入り口は、日本のフェリーなら船首が全体的にパカッと開きますがシリア・オイローパだとおちょぼ口のようです。やっぱり大きいんだなあと再認識しました。 シリア・オイローパは1時間の休憩を挟んで、再びストックホルムを目指します。やはり時間を有効に使える夜行便のほうが人気があるようで、トゥルクのターミナルはこれから船に乗ろうという人たちでごったがえしていました。僕たちが乗ってきた昼行便にくらべて乗客は2、3倍はいそうです。たぶんレストランも免税店も満員になるのでしょう。昼行便にはゆとりのあるクルーズを楽しめるという利点もあったわけですね。 シリアラインのターミナルから徒歩3分ところに駅があり、船に接続してヘルシンキ行きの列車が出ています。ヘルシンキまでは約2時間です。 |
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いかがでしたか?どうしても情景描写が苦手で事実を羅列した説明ばかりの文章になってしまうのですが、シリアラインの雰囲気を感じていただけましたでしょうか。 実は、ストックホルム→トゥルクとヘルシンキ→ストックホルムの両方に乗るという案とか、トゥルクで降りずにそのまま夜行でストックホルムに戻るという案もあって、それならばデイクルーズとナイトクルーズの乗り比べもできたのですが、今回は結局ストックホルム→トゥルクのみになりました。風光明媚なこの航路は、朝焼けや夕焼けもまた格別だろうなあと思いますので夜行便も乗ってみたかったですね。でも昼行便でずっと景色を眺めながらのクルーズもすごくよかったです。夏でも朝夕はちょっと冷えますから、デッキでずーっとのんびりというのは昼行便ならではの楽しみかただと思いますし。 |
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