「皆様、当機はただいま成田国際空港に着陸いたしました。皆様の安全のため・・・」
翼に映る夕日を眺めながら、到着後のCAさんのアナウンスを聞いていました。

「・・・先ほど機長より申し上げましたとおり、DC-10は本日このフライトをもって退役いたします。
日本航空へやってきて30年。アンカレッジ経由でニューヨークへ。
南回り欧州線では摂氏40度、灼熱のバグダッドへも参りました。また・・・」

DC-10が活躍した世界の舞台を回顧していく、素晴らしいアナウンス。グッときました。
おそらくベテランのCAさんが、ご自身がDC-10と共に飛んだ日々を思い出しながら、
DC-10に語りかけておられたのでしょう。

フェデックスのイレブンが見えました。その横には・・・ヴァリグのスターアライアンス!
どちらも、同僚にDC-10がいる航空会社のMD-11。
「おつかれさま」
という声が聞こえてきそうです。

フェデックスとヴァリグが並ぶその隣、続いて見えてきたのは・・・
「・・・いた!テンだ!!」
30分前に香港から到着していたDC-10でした。
その横に、到着機を待っている一団がいます。
「えっ!? ここに入るの!?」

到着はターミナルではなく、オープンスポットが用意されていました。
最後の雄姿をしっかり目に焼き付けられるように、との嬉しい計らいです。
しかもそこは、僚機のDC-10と並び、その向こうにはフェデックスとヴァリグという、
ワイドボディ3発機が集うささやかなパーティ会場。
まさかこんなところに入るとは想像もしていなくて、感激でした。

「ヒュウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン」
DC-10が歩みを止め、エンジンの音が抜けていきました。

「終わっちゃった・・・。終わっちゃったよ・・・。」
僕の体からも力が抜けていきました。

「ええっ!? うそぉ!?」
降機を待つ人たちで騒がしくなった機内で、
とりあえず人が少なくなるまで待とうと思いながらふと外を見て、唖然としました。
テンの後を追うように降りてきたのは、初めて会うタイの新塗装イレブンでした。

フェデックス、ヴァリグ、そしてタイまで・・・。
みんなDC-10に会いに集まってきたのですね。
それが偶然とは思えず、嬉しくて、嬉しくて、胸がいっぱいになりました。

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