定刻より5分ほど早くスポットアウト。
第2エンジンが起動するのを感じて、後ろのほうの天井に目をやりました。
窓の外で第1エンジン、反対側で第3エンジン、そして頭上で第2エンジンが
立ち上がると、機内はエンジンサウンドに包み込まれました。

起こしていた体がシートに叩きつけられそうな加速と、あっという間に遠ざかる地面。
Gが収まらないうちに日本へ向けて旋回が始まり、水平線と自分の水平感覚とがズレていきます。

DC-10に与えられた最後の便は、国際線とはいえその性能に対してあまりにも短い路線。
その代わり、最後の離陸は3発機のパワーを存分に感じることのできるものでした。

巡航に移ると、長距離旅行の機材らしいやさしい乗り心地に。

短いフライトでDC-10を堪能すべく、巡航に移るや否やみんな慌しく動き始めました。ジャンプシートで記念撮影させてもらったり、CAさんや乗り合わせたファン同士で思い出を語り合ったり。

情報が少ない中で立会いに来ただけあって、みんなDC-10を、3発機を心から愛する人ばかり。とても温かく楽しい時間が流れていきました。
ドアに付いている”くるくる”の窓。
「これで遊ぶのも最後ですね〜」と抜かりなく”くるくる”している人、多数。さすがラストフライトに乗るメンバーだなぁというところです(^-^。
半分に折りたたまれたテーブルもDC-10の特徴。
折りたたまれている元々の理由は座席に酸素マスクが収納されているためですが、半分の状態でちゃんとカップ受けがあるので飲み物だけのときなどにはコンパクトで良いのです。
フライト時間が短いので、ボックスミールが出されました。そういえば、国内線の早朝便で朝食が出ていたころ、唯一食べた思い出があるのも福岡から羽田へのDC-10でした。

DC-10の写真だけを集めたアルバムを開き、国内17か所、海外3か所の空港へと
巡礼に回ったDC-10との思い出を、ゆっくりと辿りました。

機長からのアナウンスで、改めてラストフライトが告げられました。
「翼を納める」という表現は武士の刀のようで、DC-10に似合うなと思いました。
(上の画像をクリックするとコンパクトデジカメムービーにリンクします[11MB、75秒])

名古屋上空。

セントレア上空。
名古屋で、セントレアで、このラストフライトを見上げていた人がいるのでしょうか。

次へ